あんこ

ショリショリショリ……

この世にはさまざまな対立がある。右派左派。犬派猫派。目玉焼きに醤油派ソース派。そのまえに一体その目玉焼きは片面焼きなのか両面焼きなのか。 他にもきのこの山たけのこの里か、東城綾西野つかさか、兎虎か虎兎か。

つぶあんか、こしあんか。

小さい頃は断然こしあんが好きだった。小豆の皮なんてただの不純物だと思っていた。皮は糖の吸収速度をさまたげるじゃまものだ。はやく私の血糖値をジェットコースターのようにあげさせてくれ。あんぱんはいつもこしあんが嬉しかった。

でもしばらく生きながらえていると、いつのまにかつぶあんがいいなと思うようになっていた。

あのつぶがあんこの美味しさの正体なのではないだろうか。あんこのコア。うまみ。あんこの「ん」の部分。

あ、これこしあんなんだ、うーん、べついいんだけど、じゃあわたしこっちのアイスもらうね。


人生は何が起きるかわからないですね。

わからないので、余生で自分が向こう側に改宗する可能性もある。きのこの里を美味しいと思う可能性だってこの先0.0000001%くらいはきっとあるのだ。そう思うとやはり自分がどんなに賛同できないものでも、その存在自体を否定するのは世界が狭まるさみしいことなのかもしれない。

でもやっぱ小中学校での大縄、あれ絶対人生に要らなかったよね。あれをしなくてすむというだけで早く大人になりたいと思った子どもは何人いただろうか。よかったね君も大人になって。

大人になって日々自分で生活用品や食料を選び、買い、袋に詰め、これから作る夜ごはんのことを考えながらエスカレーターに向かうとフードコートのたい焼き屋の人気NO.1はチョコクリームになっている。こしあんつぶあんどころではない。カスタードクリームでもない。ガナッシュでもホイップでもなくあの、なんかカスタードにチョコ混ぜた感じのチョコクリーム。

なんだかそのように世界は移り変わってゆく気がする。どちらも勝利はせずに。チョコクリームが。金時芋が。苺大福が。